2017年11月16日(木)に東京都薬用植物園で行われた『頭痛の漢方治療』講座に行ってきました。
「無料だから」と、ものすごーく気軽な気持ちで行きましたが、めちゃめちゃ面白かったです。
行ってよかった。
その内容をレポートしたいと思います。
講師について
講師は、大野クリニックの院長でいらっしゃる大野修嗣先生でした。
専門分野は「内科、リウマチ、膠原病、アレルギー、漢方医療」。
そして、個人的に驚いた履歴がこれ。
・明治薬科大学製薬学科を卒業後、埼玉医科大学医学部に入学し、卒業。
・現在、国際東洋医学会理事。
製薬学科を勉強した後、今度は医学部に入って卒業ってすごくないです?
中国にも留学に行ってらっしゃるし。
講座を受けた後にWekipediaで調べたら
「日本における臨床漢方医の第一人者」
って書いてあってビビりました。
そんな方を無料講座で呼べる東京都薬用植物園にもびっくりです。
紹介では「漢方のために生まれてきたような人」と言われていましたが、「医療のために生まれてきた人」って気がしましたよ!
こんな方が日本にいてくれて良かったです。
漢方薬の特徴
では早速、講座の内容を。
まずは特徴ですが、なんと漢方薬は「速攻性」が特徴なのだそうです。
飲んですぐに効くのが漢方薬。
個人的には、めちゃめちゃ意外でした。
長く飲まなきゃいけないものだとばかり思ってました。
先生いわく、
「昔は薬はもっと高くて、毎日飲めるような人はせいぜいお公家さんのような人くらい。一般庶民は高くて毎日は飲めなかったので、その時すぐに効くかどうかが重要だった」
そうです。
言われてみれば確かにそうですね。
高いお金払っても病気に効かないんじゃ、絶対に買いませんし!
なので、漢方薬は「長く飲んでだんだん効いてくるものではなく、その時に効くかどうかが重要」なのだそうです。
例えばインフルエンザにかかった時、漢方薬はとても良い働きをしてくれます。
ですが、西洋薬の代わりとして使うのではなく、漢方薬・西洋薬とそれぞれに役目があります。
タミフル:インフルエンザウイルスを閉じこめて、他人にうつさないようにする
漢方薬 :寒気でガタガタして体の節々が痛くて動けなくて…といった体の状態を治す
「漢方薬が良い!」ではなく、西洋薬の良い所は上手にとっていかなくてはいけない、という話でした。
納得です。
見逃しては危ない8つの頭痛
頭痛の漢方の話をする前に、まずは見逃すと危険な頭痛から。
こんな症状の頭痛の場合は、すぐに医療機関へ駆け込んでください。
①突然の頭痛
②今まで経験したことのない頭痛
③いつもと様子の異なる頭痛
④頻度と程度が増していく頭痛
(頭痛になる間隔がどんどん短くなり、痛みもましていく頭痛。例えば1ヶ月に1回→半月に1回→週に1回のように)
⑤50歳以降に初発の頭痛
⑥神経脱落症状を有する頭痛(どこかに麻痺を伴った頭痛。手が動かなくなるとか)
⑦ガンや免疫不全の病体を有する患者の頭痛
⑧発熱・項部硬直症状を有する頭痛(首の後ろが固まって、寝ている状態で他人に頭を持ち上げられたら、首が上がらないで体ごと持ち上がってしまう状態)
頭痛の種類
一般的に知られている頭痛の種類の説明です。
頭痛は一次性と二次性に分かれます。
一次性頭痛:他に原因のない頭痛
二次性頭痛:明らかに他に原因のある頭痛
■一次性頭痛:他に原因のない頭痛
1)片頭痛 – イミグランやマクサルトを処方されている人は片頭痛
①前兆のあるもの – 頭痛が起こる前に前兆があらわれる。片頭痛の典型的なもの。
・視覚障害 – キラキラした光、点、線が見えるなど。視覚消失(目が見えなくなる)することもある。視覚消失した場合は、まずは眼科へ!
・感覚異常 – 感覚が鈍くなる
・言語障害 – 失語性言語障害(言葉が出てこなくなる)
②前兆のないもの – 頭痛が起こる前に何も前兆がない
・片側が痛む場合が多い
・拍動性(ズキンズキンと痛む)
・痛みは中~重度(かなり激しい頭痛)
・日常的な動作で悪化する(階段を上ったりとか)
・吐き気、光過敏(光がチカチカする)、音過敏(小さい音が気になる)
2)緊張型頭痛 – 最も多い頭痛
・30分~7日間持続する
・痛みは軽~中程度
・両側とも痛むことが多い
・圧迫感や締め付け感がある(ズキンズキンしない)
・日常の動作で悪化しない。むしろ良くなる。
・吐き気はない
・光過敏、音過敏はあってもどちらか一方のみ。(片頭痛の場合、両方あることが多い)
■二次性頭痛:明らかに他に原因のある頭痛
・頭頚部外傷 – 頭をぶつけた時とか
・頭蓋内の疾患 – くも膜下出血、脳腫瘍など
・ウイルスや細菌の感染 – 風邪や帯状ほう疹
・その他 – 更年期障害、精神疾患、顔面・頭蓋の構成組織の傷害(顔面や頭蓋骨が変形していて出てくる頭痛)
これらは先生によると「西洋医学的な分類」らしいのですが、「え、他にも分類があるの」って思いますよね?
これがあるんです。
というか、漢方は病気を分類していなくて、症状のパターンで見るという、西洋医学とは全く異なる治療方法になるのです。
私は初めて知りましたよ!
漢方の「証」について
漢方は西洋医学とは治し方が違うので、頭痛の分類も異なります。
なのですが、
・治し方が違うってどういうこと?
・症状をみて薬を処方するのは同じじゃないの?
と、個人的にこのあたりがよく分からなかったので、本で調べてみました。
すると、どうも漢方は症状を組み合わせたパターンで「証」というものを見るのだそうです。
たとえば、
「熱があって悪寒がする。首の後ろがこる。頭痛がする。汗は出ない。脈と腹には力がある」
という場合は葛根湯の「証」なので、葛根湯を飲めばすぐに病気が治るそうなのですが、同じような症状でも「汗が出ている」場合は、葛根湯を飲んでも全く効かないのだそう。
全く効かないんですよ。不思議ですよね。
西洋医学のように病気を分類して病名をつけ、胃の病気には○○の薬、というように決めていないので、同じ「風邪」に対しても症状の出方によって合う漢方薬がいくつも用意されているのだそうです。
漢方薬って日本の薬なのに、私は全然知りませんでした。
面白いですねえ~
頭痛の漢方医学的分類
というわけで、「証」をふまえて漢方の頭痛の話に戻ります。
主に4つに分かれます。
①気逆(手足の冷え)の頭痛
漢方では人の生命エネルギーである「気」が全身を巡っていると考えられていて、体温の維持などをしているが、この「気」が上にばかりあがっている状態のこと。手足が冷えている。
②水毒(低気圧)の頭痛
低気圧がくると頭痛になる人。体の中の水の動きが悪くなる。
③瘀血(月経異常)の頭痛
生理の時期がくると頭痛になる人。一種の血流傷害。血流傷害は男性にも起こるので、男性も無関係ではない。
④傷寒(風邪)の頭痛
風邪で頭痛になるパターン。
これらの症状にそれぞれ合う漢方薬があるのですが、長くなってしまったので、次回に続きます!
参考文献
『あなたにあった漢方薬がわかる本』白馬出版
藤平 健(著)/勝田 正泰