【レポート】2頭痛の漢方治療講座に行ってきました/東京都薬用植物園

頭痛の漢方治療講座のレポートの続きです。

前回は、漢方は頭痛の分類も西洋医学とは異なる、という話で終わりました。

①気逆(手足の冷え)の頭痛
②水毒(低気圧)の頭痛
③瘀血(月経異常)の頭痛
④傷寒(風邪)の頭痛

主にこの4つに分かれるのですが、今回はこれらを詳しく説明します。

※前回はこちら ⇒ 【レポート】頭痛の漢方治療講座に行ってきました

6回もあるシリーズなので、こちらに目次をつくりました

『頭痛の漢方治療』講座 平成29年11月16日
講師:大野修嗣 先生(大野クリニック院長)

場所:東京都薬用植物園薬草教室

 

【気逆】手足の冷えによる頭痛

「気」とは?

東洋医学独特の考え方で、働きだけあって形のないものです。

血や水とともに体の中を循環しているもので、呼吸によって天の気が、食べることで地の気がそれぞれ体内に取り入れられ、それらが一緒になったものが「気」となって体内を巡ると考えられています。

一言でいえば、全身をめぐる「生命エネルギー」ですね。

体温の維持(体を温めている)などをしているこの「気」が、上にあがって下が冷える(手足が冷えている)状態を「気逆」と言い、これが原因で起こる頭痛のことになります。

 

【気逆】効果的な漢方薬

呉茱萸湯(ごしゅゆとう)

「手足の冷え・胃腸・項のこり」を治します。

実際の治療の例としては、

緊張型頭痛・片頭痛・嘔気・嘔吐・吃逆(しゃっくり)

があります。

呉茱萸湯のキーワードはとにかく「手足の冷え」です。

手足が冷えると頭痛になる人は、これを使えば良いそうですよ。

 

抑肝散(よくかんさん)

「自分ではコントロール不能の精神神経系の緊張」を治します。
※ 次回で詳しく説明します。

 

【水毒】低気圧による頭痛

体の中の水の動きが悪くなって頭痛になるタイプで、低気圧がくると頭痛になる人などが当てはまります。
南の海で台風が発生すると頭痛になる人とか。

水毒

体内の水の動きが悪くなって、どこかに水分(体液)が偏っている状態をすべて水の異常として「水毒」といいます。

具体的には浮腫・腹水・胃アトニーの胃内停水などです。涙や尿、汗、鼻水なども水毒の1つと考えられています。

 

【水毒】効果的な漢方薬

五苓散(ごれいさん)

「水毒による頭痛・嘔吐・下痢・発熱・口渇」を治します。

実際の治療の例としては、

熱中症・感染性胃腸炎・二日酔い・弾き指・水痘・硬膜下血腫

があります。

のどが渇いて水をよく飲む割には小便の出方が少なく、汗をかきやすい頭痛もちに根治例が多数あるそうです。

植物園で咲いていたヤマジノギク

【瘀血】月経異常の頭痛/効果的な漢方薬

生理の時期になると頭痛になるタイプ。

「瘀血(おけつ)」とは血流が静脈内などに停滞している、一種の血流障害のことです。
血の流れが悪くなっている状態ですね。

主な対象者は生理の時期がくると頭痛になる人ですが、血流障害は男性にも起こるので、無関係ではありません。

「血の流れが滞っているために生理痛が重い。頭が痛い」といった症状が現れるなど、生理にまつわる問題で頭痛が出ている場合などに服用します。

 

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

血の流れが悪くなり、顔がほてり、足腰の冷える人に使います。
滞った血のめぐりを良くすることで月経異常を改善し、頭痛を治します。

 

加味逍遙散(かみしょうようさん)

血の不足でさまざまな症状を引き起こしている人に使います。
不足している血を補うことで、体のバランスを整えます。

 

【傷寒】風邪の頭痛/効果的な漢方薬

風邪で頭痛になるパターンです。

葛根湯(かっこんとう)

漢方薬の代名詞といえるぐらい有名な葛根湯は、風邪にともなう頭痛に適します。
発汗の傾向がなく、首の後ろから背中にかけてこりやすい人に用います。

※風邪に葛根湯は有名ですが、「風邪だから葛根湯」というわけではありません。
風邪の引きはじめで悪寒がして、うなじがこって、という場合に葛根湯を使うと効果的なのだそうです。
つまり、なかなか治らなくてズルズル続いている風邪に葛根湯を飲んでも意味がないってことですね。

 

麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

体温を計ると熱が出ているのに、寒気ばかり訴える人に使います。
体を中から温めて冷えを解消させ、発汗を促して熱や痛みを発散させるため、頭痛にも効くし、風邪全体にも効果があります。

 

川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)

風邪をひいてとにかく頭痛がひどい人に使います。
(風邪を発散させて頭痛を止める働きがあるため)

風邪をひいたときの頭痛には一番頼りになるそうで、なんと、だいたい15分で効くそうです!

 

次回は実際の症例を書いていきます♪

 

参考文献

『あなたにあった漢方薬がわかる本』白馬出版
藤平 健(著)/勝田 正泰

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