【レポート】5頭痛の漢方治療講座に行ってきました/東京都薬用植物園

頭痛の漢方治療の第5回目です。
今回は、「風邪の頭痛シリーズ」になります。

『頭痛の漢方治療』講座 平成29年11月16日

講師:大野修嗣 先生(大野クリニック院長)
場所:東京都薬用植物園薬草教室

6回もあるシリーズなので、こちらに目次をつくりました

【症状4】:インフルエンザの男性A

・57歳の男性
・昨日の夜からのどが痛くなり、朝になって発熱
・うなじのコリと頭痛
・体温は38度2分。のどが赤くなっている
・インフルエンザで陽性反応

漢方所見)

・青白い顔をしていてのどが痛い
・うなじがこっている
・寒気がしていて咳が出る
・特に頭痛がひどい

処方)
・タミフル5日間
葛根湯(かっこんとう)

経過)
翌々日に来院。熱が下がって頭痛も治ったので葛根湯はやめて、服用はタミフルだけに切り替えた

葛根湯(かっこんとう)とは?

漢方薬でおそらくもっとも有名な葛根湯は、風邪の引き始めに飲む薬です。
と言っても「風邪だから葛根湯を飲む」というわけではなく、

熱がでる病気の初期の状態の

・寒気があって
・汗がなくて
・うなじがこる

という3つの症状があれば、葛根湯がよく効くそうです。

間違えないでくださいね!

発汗して病気を治す薬で、漢方所見にある

・青白い顔をしていてのどが痛い
・うなじがこっている
・寒気がしていて咳が出る
・頭痛がひどい

といった症状の全てを1まとめにして、全体的に治してくれます

(葛根、麻黄、桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草)の7つの生薬が入っていて、そのうちの(生姜、大棗、甘草)の3つが胃を守りながら症状を治していく、という薬になります。

葛根湯は母乳不足にも使える

葛根湯には乳汁分泌作用があるので、産後の乳汁分泌不足にも使えるそうです。

というのも、上で説明したように葛根湯は「汗をかいて病気を治す薬」なので、つまりは体の分泌を促進する働きがある、ということなのだそう。

生薬でいうと、麻黄と桂皮にこの働きがあるそうです。

乳腺は発生学的には汗腺と同じで、汗腺が進化して乳腺になったので、同じように働いてくれるそうです。

身体って面白いですね!

薬草園の資料館にあった、葛根湯の生薬

症状が良くなったら漢方薬はやめる

経過のところで「熱が下がって頭痛も治ったので葛根湯はやめて、服用はタミフルだけに切り替えた」と書きましたが、こんな風に、症状が良くなったら漢方薬はやめてしまって構わないそうです。

「ズルズル使わなくていい!」とおっしゃってました。

ただし、この場合でいうと、タミフルは5日間きっちり飲まないと意味がないのでしっかり最後まで飲んでくださいね。

【症状5】:インフルエンザの男性B

・26歳の男性
・朝10時:極度の悪寒(36度8分)
12時:37度2分
15時:38度
16時:来院(38度9分)
・ノドが痛くて全身の倦怠感あり
・インフルエンザで陽性反応

処方)
・タミフル
麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

症状4の人と同じインフルエンザなのに、違う薬が処方されるって面白いですね!
その人の症状にあわせて処方される、これぞ漢方薬って感じです。

麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)とは?

体温を計ると熱は高いのに自分では熱感がなく、寒気ばかり訴える人が飲むと良い薬で、目安は「倦怠感」だそうです。

風邪を引くと、かたくなって動けなくなってしまう人とか。

(麻黄、附子、細辛)の3つしか生薬が入っていないという超シンプルな漢方薬で、超シンプルなのでめっちゃ切れ味があって効きが良いそうです。

葛根湯は(生姜、大棗、甘草)の3つが胃を守りながら症状を治していくので、少し切れ味が悪くなりますが、麻黄附子細辛湯は「そんな事は微塵も考えてないぜ!」「とにかく身体を温めて症状を治すぜ!」という薬になります。

とっても切れ味が良い。

(麻黄、附子、細辛)この3つが全て、身体を温める生薬です。

ノドの痛み、咳、鼻水、頭痛といった風邪の症状は、だいたい治してくれるそうですよ。

総合感冒薬はあんまりオススメしない

超シンプルなので効きの良い麻黄附子細辛湯と比べて、色々入っている総合感冒薬は、

・熱もないのに解熱剤が入っている
・鼻水もないのに抗ヒスタミンが入っている

といった感じで、あまり良くないそうです。

薬を飲むなら、その時の状況に合わせた薬を飲む方が良いですよ、とおっしゃられていました。

熱があるのに身体を温めるのは良いのか?

結論からいうと、良いです。

身体は熱を出して病気を治そうとしているので、その免疫システムの働きをジャマする解熱剤は、できれば飲まない方が良いです

身体を温める薬を飲んで免疫システムを助けてあげると、風邪が早く治ります。

データもあります。

『麻黄附子細辛湯と総合感冒薬の、どちらが先に症状がとれるか?』

麻黄附子細辛湯:80例以上
総合感冒薬:80例以上

という実験を、全国の12施設の医療機関が参加して行ったそうです。

予想では「麻黄附子細辛湯は身体を温めるから、寒気が先にとれるだろう」と言われていたのですが、実際には、麻黄附子細辛湯の方が先に発熱が治ったそうです。

総合感冒薬の中には解熱剤が入っているにも関わらず。

「熱が下がった」ということは「病気が治った」という意味なので(やっつけるウイルスとかがいなくなった)、身体を温める麻黄附子細辛湯を飲む方が、病気が早く治るということになります

熱が高すぎたり体力のないお年寄りなどは別ですが、普通の風邪なら解熱剤は使わず、身体を温めて免疫システムをしっかりサポートして病気を治してください、とのことでした。

悪いのは熱じゃないんだよ!

【症状6】:寒気がある女性

・54歳の女性
・風邪をひきやすく、冷え性
・片頭痛あり
・3日前に寒気がして、そのまま頭痛になり、マクサルト(片頭痛の薬)を服用するが効果なし
・市販薬も服用してみたが効果がなく、来院

所見)

・顔面が少し紅潮している
・痩せ気味で、ややぼーっとしている
・寒気と頭痛がする
・頭痛で食欲がない
・咳なし、ノドの痛みなし、お腹の具合は大丈夫

処方)

川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)

経過)

すごく効いて、片頭痛も治った

川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)とは

生薬:川芎、荊芥、防風、薄荷、香附子、白芷、羌活、茶葉、甘草

何を治す:頭痛、悪寒、めまい(発熱はあっても良いが、寒が基)

臨床応用:頭痛が強い風邪

寒気がして頭痛がしたらこれだ!とおっしゃられてました。

身体を温めながら頭痛をとる薬なので、全体的に冷えのある人の頭痛に良いそうです。

漢方は西洋医学の分類とは違うので、その頭痛が漢方的にどこから来ているのかをみて治療します。

なので、緊張型頭痛であろうが片頭痛であろうが「寒気がして頭痛」だったらこの薬なのだそうです。

風邪の時の頭痛でも色々あるんですねえ~

長くなったので、続きます。
(次回で最後かなあ)

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