【レポート】4頭痛の漢方治療講座に行ってきました/東京都薬用植物園

頭痛の漢方治療講座のレポートの4回目です。

今回も、実際の症例をもとに説明をしていきます。
①緊張型頭痛の男性/二日酔い
②神経痛の女性/帯状疱疹

 

『頭痛の漢方治療』講座 平成29年11月16日

講師:大野修嗣 先生(大野クリニック院長)
場所:東京都薬用植物園薬草教室

 

6回もあるシリーズなので、こちらに目次をつくりました

 

【症状2】:緊張型頭痛の男性

・66歳男性。38名の製造業の社長さん。
・9月に頭痛が出て、緊張型頭痛として以下を服用。
 ●ミオナール(筋肉の緊張をとる)
 ●デパス(不安感をとる)
・しかしこの薬を飲んでも頭痛の頻度が多く、ロキソニンも服用している。

※余談ですが、デパスは(できれば)あまり使用しない方が良いそうです。習慣性があって、これを使い始めるとやめられなくなるのだそう。

漢方所見)
・体力はしっかりある
・眼球結膜の充血(目が充血している)
・半年前から怒りっぽい

⇒「気逆の頭痛」と診断
気が上にばかりのぼってしまって、手足が冷えている状態の頭痛。

 

処方)
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

経過)
すぐに次の日から良くなった。
気分も落ち着いてくるようになった。

 

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)とは?

「いらいら、のぼせ、赤ら顔、目の充血、出血、胸焼け」を治す薬です。

抑肝散とは違い、自分がイライラしているのがわかる人。熱っぽい人に使用します。

黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、黄柏(おうばく)、山梔子(さんしし)という生薬で構成されていて、4つとも体を冷やす生薬となります。

何を治す:いらいら、のぼせ、赤ら顔、目の充血、出血、胸やけ

臨床応用:結膜炎、血管炎、皮膚炎、鼻出血、消化管出血、二日酔い、高血圧や脳血管障害に関連する症状

とにかく「のぼせて、気が上にあがって、カーッと頭にきて、イライラして」みたいな症状の頭痛に効果があるようです。

いるいる、そういう人。。

 

黄連解毒湯は二日酔いにも効果あり!

二日酔いになった後ではダメですが、飲む前に黄連解毒湯と五苓散(ごれいさん)をセットで服用しておくと、次の日に頭痛や吐き気がないそうですよ。

先生ご自身の経験で「これさえ飲んでおけばサッパリします!」と力説しておられました。保証はできないそうですが 笑

忘年会シーズンですし、次の日の自分に自信のない方は、薬局でこの

黄連解毒湯
五苓散

をこっそり買って、飲んでおいてはいかがでしょう?

酒は飲んでも飲まれるな。

植物園の温室でなっていたカカオの実

【症状3】:神経痛の女性

・62歳女性。頭痛がすると言って来院。
・関節リウマチの治療をしていた。
・ガン家系(両親ともにガン)
・2日前から右の後頭部がズキンとする。ロキソニンを飲むと少し良くなるが、頭痛を繰り返している。

所見)

⇒「大後頭神経痛」

大後頭神経痛の原因は色々ありますが、この人の場合はヘルペスウイルスによるものと診断。

 

処方)
・抗ウイルス薬のバルトレックス
升麻葛根湯(しょうまかっこんとう)

※ヘルペスウイルス以外の理由の場合は、違う処方となります

経過)
服用2日で回復し、痛みも改善した。
(ただし、抗ウイルス薬は1週間きっちり飲み続けた。抗ウイルス薬は途中でやめてはいけないので)

 

升麻葛根湯(しょうまかっこんとう)とは

頭痛がして発疹が出るときに用いる薬です。

発疹で使用するので、はしかや風疹などにも使用します。

ですが、治り方を知らないと、ちょっとビックリするかもしれません。

「皮膚の下にある病毒を外に吐き出して良くなる」という治り方なので、この薬を服用するとポツポツした赤いものがぶわっと増え、その後スッと良くなるそうです。

まさに「見える毒出し」って感じですね~

 

升麻葛根湯は帯状疱疹(たいじょうほうしん)にも良い

皮膚湿疹の症状を改善するので、帯状疱疹でも効果を発揮します。

帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは?

体の左右どちらかの片側に、帯のように水ぶくれ(水疱すいほう)の集まりができる疼痛を伴う病気で、水痘すいとう・帯状疱疹ウイルスの感染で起こります。

子どもの時にほとんどの人はみずぼうそう(水痘)にかかります。しかし、それが治っても、このウイルスは三叉さんさ神経(顔面を支配)や脊髄せきずい神経(顔面を除く体の皮膚を支配)の知覚神経節に、遺伝子の形で潜伏しています。

それが長い期間をへて、ストレスや過労などで体の抵抗力が低下すると、遺伝子の形からウイルス粒子に変わって再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に現れて炎症を起こします。これが帯状疱疹です。

(Yahoo!ヘルスケアより)

西洋医学では帯状疱疹ウイルスに対する抗ウイルス薬を服用してウイルスをやっつけますが、湿疹の症状に対するケアは行いません。
というかできません。

せいぜい、痛みがでたらロキソニンを出すぐらいなのだそう。

 

皮膚にポツポツと湿疹が出ていても西洋医学では何もしないので、そういう時に升麻葛根湯を使います。

治り方は風疹やはしかと同じで、この薬を服用するとポツポツしたものがぶわっと増え、その後スッと良くなります。

水泡にもならず、何より帯状疱疹後の神経痛が全く出ないそうなので、帯状疱疹になってしまったら絶対に使おうと心に誓いました。

ただし、帯状疱疹後の神経痛で苦しんでいる時ではもはや遅いらしいので、必ず帯状疱疹になった時に使用してくださいね

 

漢方薬はシンプルな方が切れ味が良い

葛根、升麻、生姜、芍薬、甘草

というわずか5種類の生薬しか入っていない升麻葛根湯ですが、漢方薬というものは中身がスッキリしていて色々入っていない方が切れ味が良いそうです。

あれこれたくさん入っていれば色々と効きそうな気がしますが、そういうものではないそう。

何を治療するのか方向性をハッキリさせて、どういう風に治していくのか考えながら治療する。それが漢方薬。

入っている生薬が全て1つにまとまって病態を治しているので、たくさん入っていると方向性が定まらずに「何やってるの?」状態になってしまうのだそうです。

「この漢方薬には生薬がいっぱい入っていて良いんですよ~」と言われたら、疑ってかかってくださいね!

 

長くなってしまったので、次回に続きます!

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